ペルソナ4 その2

第2章 〜起動〜

とあるきっかけでペルソナ4をやることになった。といっても待ち時間が増えた、移動時間が増えた、だけ。
なんとなく仕事の都合で待ち時間がありそうだな、暇になりそうだなと予感していたので、保険でPSvitaを持っていくことにした。
いつもならそんなことはしない。暇なら暇でいいし、ボーっとすることには慣れている。
ボーっとしている熟練度は誰にも負ける気がしない。ボーっとしている熟練度でジョブチェンジできるジョブがあるとしたら、その名前は間違いなく畠山承平だ。君がもし畠山承平にジョブチェンジしたければボーっとする熟練度を上げることだ。

しかし、それはそう、まさに「しかし」だ。
今回はなぜかPSvitaを思い出した。部屋の片隅で充電もされることなく眠り続けているPSvitaが忘れないでくれ、と僕に言いたかったのだろうか。それは誰にもわからない。答えは運命だけが知っている。運命。そんなものは僕は信じないのだが、今回の出来事で僕は運命もしくはそれに近い何かを知ることになる。

そして予感は的中した。とはいえそんなに長時間やるほどでもなかったのだが。それが逆によかったのだ。とても運命らしい感じが。
何もしなくても過ごせる時間だったが、敢えて起動してみた。その時、何かが僕を動かしたのだと思う。そう今では確信している。
これも運命らしい感じがとてもする。

最初に起動したのは天外魔境2だった。

天外魔境2を起動した理由はラフにできそうだなと思ったからだ。昔のゲームは難しく考えなくていいものが多い。
その時、僕はイヤホンを持ってくるのを忘れていた。
というか普段持ち歩いていない。移動中に音楽を聴くことはあまりない。若いころは絶対に持ち歩いていたが今は違う。
普通に危ないからだ。音楽を聴いて集中してると電車を降りるのを間違えたり、周りの空気を読めなくなったりする。普通に危険だ。
後ろから自電車が来たり、狭い道で車が後ろから来たりすると、普通に危ない。
ありがたいことに何度か危ない体験をさせてもらってるのでこの地上ではなるべく移動中に音楽は聞かないようにしている。

更に、これは持論だが、電車の中でやたら近いところにいても気にしない人がたまにいるが、十中八九音楽を聴いている。
人間は目ではなく、耳で距離を測っているのだ。嘘だと思うなら確認してみて欲しい。
何この人、なんか近くね?と電車で見知らぬ人が気にせず近づいてきたらアタリだ。
もしくは痴漢かもしれないから女子は男子より、より注意して欲しい。

話を天外魔境2に戻そう。
天外魔境2を起動してすぐにこのゲームは今やることができないと僕は判断した。
プレイしたことがある方はすでにお気づきであろう、イントロのアニメシーンは字幕なしのセリフのみだ。
主人公が「おかわり!」みたいなセリフを言いそうな飯をガツガツ食べてるシーンからスタートする。

音がなくては何を喋ってるかさっぱりわからない。
こうして僕は天外魔境2をあっさりと諦めペルソナ4を起動することにした。
これもまさに実にとても運命らしい出来事ではないか。

イヤホンなくても音出して普通にプレイすればいいじゃん、と思った方はまずは常識から学び直した方がいいだろう。
こんなブログを読んでる暇があるなら迷惑という項目から学び直した方が良い。

ペルソナ4は音無しでもとりあえずプレイすることができた。
その時はまだ気づいていなかった。音無しでプレイしていることがいかに愚かであったかということに。

第3章 〜殺人事件〜

ここからは所謂ネタバレが含まれてくる。ペルソナ4をプレイする予定がある人は要注意。
そして、正直なところ、プレイした人じゃないと伝わらないものが多すぎるかもしれない。とにかくネタバレ注意。だ。

ペルソナ4の物語は主人公が都会から田舎に引っ越すところから始まる。
両親の仕事の都合で叔父のところに一年間預けられることになった主人公。高校二年生。
叔父(刑事)と叔父の娘(小学生)と3人の共同生活をすることに。

その小さな町で殺人事件が起きる。
ニュースで話題になっていた不倫騒動を起こした女子アナウンサーがアンテナに吊るされて遺体で発見された。
不倫相手の市議会議員秘書、もしくはその妻が容疑者として上がるが二人ともアリバイが成立した。

はじめは自分とは無関係かと思われていた事件だが、第二の被害者が同じ学校の女生徒で、最初の被害者と同様にアンテナに吊るされていた。連続殺人事件として扱われることになり、次第に事件に巻き込まれていく。

といった序章だ。

この序章だけで僕はこのゲームに魅了されていった。
ちなみにこの序章の中でもアニメシーンはいくつかあったのだが、この時はまだアニメシーンなんて味付け程度、音なんかなくても大丈夫。って感じで音無しでプレイしていた。セリフがないっぽい感じだったからだ。

その日はプレイ時間1時間弱程度で帰宅することになった。
いつもなら、家に帰ったらPS4を起動するのだが、この日は違った。
家に帰ってもペルソナ4の話が気になり、PSvitaを起動することになった。
これは自分でも予想しなかった展開だった。この僕が自宅で携帯ゲーム機を起動することになるだなんて。
この僕に!この僕に予定と違う行動をさせるだなんて!1989年のゲームボーイ以来な気がする。
勉強机の引き出しからゲームボーイを取り出し、勉強するふりをして魔界塔士Sa・Gaをプレイしたことは昨日のことのようにはっきりと鮮明に覚えている。あまり過去のことは覚えない僕の数少ない記憶だ。僕の部屋から見える青い空。やわらかな木漏れ日。
記憶。記憶はとても美しい。いつだって。

そう、自宅でのプレイなら音は出しても問題ない。

音を出すまで気づいてなかったのだが、アニメシーン以外でのセリフ、普段の会話でもボイスが付いている。
大事なシーンはほとんど付いているようだ。
だが、タイミングよく読むとどうしてもセリフが付いてこない。字幕を読み終わり丸ボタンを押すとボイスが飛んでしまう。
まぁもともとボイス付きのセリフはあまり好きではないので、自分の読めるペースでガンガンボイスを飛ばしていた。
そのありがたみに全く気づいていなかった。むしろちょっとウザいくらいに思っていた。

この時はとにかくこの殺人事件がどういう展開をしていくのかが楽しみで仕方なかったからだ。
殺人事件はいつだって魅力的だ。現実のもの以外は。

しかし、後に僕はすべてのセリフを聞くことになる。僕が字幕を読み終えても彼らが喋り終わるまで待っていようと心から思えた。
価値観はこうして崩壊していくのだ。自分が勝手に作り出した愚かな価値観。偏見。いや、価値観なんてものでもなかったのだろう。
いつだって心の壁を乗り越えてくるものが最高のものなのだから。

つづく